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政策最新キーワード

USED商品の価値と市場

足立 光生 投稿者 足立 光生 : 2018年1月1日

 新しいビジネスモデルによって、われわれの社会通念が変わることがある。たとえば、これまで価値を判別することが難しかったUSED商品に、価値を見出す機会が与えられたら、われわれのモノに対する考え方は根本的に変わる。消費と思っていた行為が実はそうでなかったり、逆に、プレミアを考慮した投資に転じたりする。

 近年、USED商品に関するビジネスが拡大している。USED商品の売買についてはこれまでも様々な形態があったものの、その売買の広がり方は狭く、社会的にもそれほど注目を集めるビジネスにはならなかった。一言で言えば、USED商品を扱う市場(しじょう)そのものに限界があった。

 USED商品に関して、大きなブレークスルーとなったのは、2013年に出現したメルカリである。メルカリは株式会社メルカリが運営するフリマ(フリーマーケット)アプリである。フリマは現実世界でも十分に市民権を得てきたものの、一般的には局所的な、狭い一部の地域のイベントであった。フリマの特徴である売買者同士のコミュニケーションを通じた値段交渉、そして駆け引きを、インターネットという媒体を使って表現することは難しいように考えられていた。特に、フリマにおける出品者は、営利目的をもつ人ばかりではない。自分の要らなくなったモノをコミュニティのなかでシェアしたいとも考えており、そこには社会的意義も存在する。ただし、近年のSNSの発展、そして随所に工夫の施されたメルカリは、地域の壁を壊し、インターネットに巨大なフリマを構築した。そして、それは個人間の取引を主体とした巨大な市場となっている。

 メルカリが、いわゆるミレニアルズの行動をうまくとらえたことも勝因であろう。一般的に、ミレニアルズは、リアルにおける充足感を追求し、モノを所有することに拘泥しない。ミレニアルズはこれまでの世代に比べ、環境への意識も高く、不要になったモノを廃棄するのでなく、循環させたいとも思っている。そのよう傾向から、大量のUSED商品が行き場を求めており、メルカリはそれらを自らの市場に吸収できたといえる。

 これまでにも、USED商品に関する新しいビジネスは様々な形でインターネット上に出現した。なかでもポピュラーなのは、インターネットオークションであろう。インターネットオークションがUSED商品を表舞台に出した意義は大きいが、その価格決定のプロセスが当事者にとって見えにくい場合もある。特に、欲しい物を競り合って落札しようとすれば、それなりの「気合い」が必要である。それに比べ、フリマは、ある程度の価格を出品者が設定しておけば、その後は価格交渉が進む。フリマ独自の特徴である「価格の終着点の見えやすさ」に、安心を感じる人も多いのではないか。メルカリをきっかけとして、フリマ機能の充実を図るサイトが出てきたのも十分頷ける。

 メルカリは2017年11月に mercari NOWを発表し、買い取りサービスも始めた。このようにUSED商品に関するビジネスは、なお拡大傾向にある。ただし、ポジティブな現象だけではない。特に2017年には、利用者が現金を出品する等、これまでの想像を超えた利用方法が社会問題となった。こうした新しい問題に対して急務な対策が必要とされており、さらに今後は、新しい教育のあり方が問われてくるかもしれない。

 ところで、筆者は、市場といっても資本市場やデリバティブを研究対象としてきた一人であるが、こうしたUSED商品市場についても特定の関心を持っている。それは「市場参加者がUSED商品の価格をどのように設定していくか」というプライシング(価格付け)に関するものである。フリマでは、一般的に交渉によって価格が下がることを想定して、出品者は高めの価格を当初設定する。ただし、価格交渉がいくら進展しても、出品者にとって妥協できない価格は存在する。そうした価格の妥当性については、いったいどのように判断するのか。

 従来、USED商品の価値を判断するには、玄人による鑑定やカンドコロが中心であった。科学的には、たとえばヘドニック・アプローチも一役買うであろう。それらはそれらで良いが、これまでに見たことのないプライシングに関するアプローチが出てきたら面白い。あくまでもイメージであるが、(資本市場におけるデリバティブ取引のように)理論価値を計算可能な「プライシング・モデル」がUSED商品市場にも登場することになったら、市場は劇的に進化するはずだ。参加者一人ひとりがUSED商品の価値を正しく判断するようになれば、モノを大切にする気持ちはより高まる。
われわれの社会が、環境に優しい循環型社会にさらに近づいていくことを期待している。