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ソーシャルイノベーションを巡る冒険

佐野 淳也 投稿者 佐野 淳也 : 2017年7月1日

 ソーシャルイノベーション、ということばがにわかに注目されている。同志社大学では10年前より大学院総合政策科学研究科にソーシャルイノベーションコースが設置されているが、とりわけこの数年でソーシャルイノベーションと呼ばれる実践や概念が、社会課題の解決と新たな産業創出という2つの文脈から注目されるようになってきている。

 例えば日本財団では、昨年から「ソーシャルイノベーター支援制度」を開始した。これは、社会課題をこれまでにない新たな手法で解決することにより、新たな社会システムの創出が可能なインパクトのある実践に、最大で3年間で3億円もの支援を行う取り組みだ。

 昨年は、島根県隠岐郡海士町での高校魅力化の成功事例をベースに、全国の教育魅力化による地域活性化を加速させる「地域・教育魅力化プラットフォーム」など、3つのプロジェクトが受賞団体に選ばれた。

図(佐野).jpg

                          日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016(2016年9月30日 東京)
                         *日本財団HP ソーシャルイノベーションページより引用
 
 
 その背景には、これまで日本財団が支援してきた草の根のNPOなどの活動が、必ずしもその地域や社会の課題を産み出しているシステムそのものの変革にまで結びつかず、大きな社会インパクトを産んでいない状況があったと言われている。

 NPOなどの活動は、社会課題に対する「ほっとけない」という情熱や、理想の社会に向けたビジョンのもとに編まれる社会的使命(ミッション)に基づくものだが、活動規模が小さく多くの場合は資金や人材などのリソースも極めて限られていることから、なかなかそのビジョンを具現化していく道程が描ききれないことが多かった。

 しかし近年はこうしたNPOに対しても、どれだけ目指す課題解決とシステム変革をなしえたか、という社会的インパクトを主な評価軸として設定されることが増えた。そしてたとえば地域における子どもの貧困など、ひとつの組織や特定のセクターのみでは解決が難しい複雑かつ社会システム全体の変容が求められる課題に対し、様々な組織やセクター間の連携・協働により確実な成果を出していこうとする「コレクティブ・インパクト」という考え方が大きく注目されている。

 前述した日本財団のソーシャルイノベーター支援制度は、こうしたコレクティブ・インパクトを目指すプロジェクトに対し集中的な支援を行うものだ。セクターや組織の壁を超えた協働により、確実かつ目に見える成果を産み出していけるチームを評価するものであり、その軸となるソーシャルイノベーターに対し、事業のスタートアップ及び拡大のための資金が提供される。

 ソーシャルイノベーション、という概念も市民の立場で社会課題にコミットしようとする草の根のNPOの動きと、ビジネスを通して社会を良くしていこうとする社会的企業やソーシャルビジネスの両方の動きや理念が組み合わさる中で発展してきた。非営利(non-profit)という概念には、利益の最大化を目指すが上に時に環境破壊や人権侵害の原因にもなってしまう営利企業の活動に対するアンチテーゼが含まれている。しかし、NPOの多くが抱える事業性の薄さが、社会的インパクトの小ささにも結びついてきた。

 ソーシャルイノベーションという概念は、いわば Profit for Mission とでも言うべきものであり、より良い社会をつくるというミッションに向けて継続性のある事業を産み出し、利益と雇用を産み出しながら問題を産み出しているシステムそのものの変革を目指していくところに最大の特徴があると言えるだろう。

 このように、ソーシャルイノベーションは営利セクターと非営利セクターの両方を結びつけ、またセクターを超えた協働を生み出す上での共通言語になりつつある。ソーシャルイノベーションを巡る冒険は、これからさらに大きく広がりそうだ。