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ソフトウェア技術者は身近な存在ですか?

中田 喜文 投稿者 中田 喜文 : 2017年6月1日

 3年ほど前からソフトウェア技術者の研究を進めている。昨年の末に研究費を提供してくれたスポンサーに対し報告書を提出し、さらに今年の4月と5月、2本続けてスポンサーが出版しているソフトウェア‐関連の専門誌に論文を投稿し、これでスポンサー契約に記載された責務を果たした、やっとスポンサー呪縛から解放されて、つかの間の心の自由を感じている。今までは、科研や様々な財団の研究費をもらって好きな研究を行ってきたので、今回初めて「委託研究」と言う名の研究費をもらって、本当に腰が抜けた。なんと制約の多いことか。提出した研究計画書と少しでも異なる出張や物品の購入はすべて、説明書の提出と変更願いを作成しないと承認されない。また、頻繁に行われる中間報告会も、事前に原稿を提出し、詳細に赤が入り、すべて完全な事前資料を提出することが求められる。そして何よりも、計画書通りの研究スケジュールで研究を進めることが、当然のように期待されている。今回の経験から、今までもらってきた研究費のありがたさを再確認できた。実はもう一つこの委託研究から学んだことがある。計画通りに研究を進める、研究プロジェクトマネジメントの大切さである。そしてその要諦は、計画書に記載した成果を、予定した期間内で実現する責任感である。これから先、幾つ研究費を獲得できるかわからないが、今までとは違った思いと責任感で研究を使っていけそうだ。

 さて、前置きが長くなったが、この多くを学んだ委託研究のテーマが「ソフトウェア技術者の生産性と働き方」であった。皆さんにとってソフトウェア技術者ってどんな存在だろうか。実は我々の生活に彼らは深く関係していること知っているだろうか。スマホがスマホとして使えるのは、彼らが書いたソフトウェアがあのスマホの中で働いているからだ。みなが好きな曲を友達と共有したり、コピーしたり、編集したり、これらもすべてソフトウェア技術者が作ったソフトウェアのお陰。自動車が自動車として走れるのも、今はソフトウェアのお陰。宅急便が時間通り、依頼した場所に配達されるのもソフトウェアのお陰。もちろん皆さんが毎日使うメールやSNSも彼らが書いたソフトで動いてる。もちろん、彼らの仕事は作るだけじゃなくて、作ったものが動かなくなることが無いようにすることも。毎日のように危険なウイルスがネット上で作られ、多くのサイトを汚染する。この脅威から我々を守るのも彼らの仕事。

 こんなに大切な仕事をしてるソフトウェア技術者達。でも、彼らはあまりハピーには仕事をしていない。先ず、仕事は何時も残業ばかり。日本じゃソフトウェアの仕事をしていて、9時‐5時で帰れる人はいない。フランスやドイツのソフトウェア技術者たちは、5時に帰れない人はむしろ珍しいのに。給料もみんなが思うほど高くない。大雑把に言うと、同じような仕事をするアメリカ人のソフトウェア技術者の半分ほどしかもらっていない。そして何よりも、自分の仕事に誇りをもてず、楽しく仕事が出来ていない。彼らが作るソフト無しには、今の日本は日本でなくなるほど、彼らは大切な仕事をしてるのに。確か去年の夏、カリフォルニアのある有名な企業を訪問し、そこでソフトウェア技術者と話していた時の事、よく思い出す。アメリカ人の彼はこんなことをつぶやいた。「ソフト作りは地球上で一番クリエイティブな仕事だよ。」「なぜ?」と聞くと、「だって僕らの仕事に物理限界がないからさ。」
この意味わかりますか。「だって僕らはソフトでなんだってつくれるんだ。」彼はそう言いたかったんだと思う。こんな言葉、日本のソフトウェア技術者から聞きたかった。もう少しこの研究を続けて、何時か日本でもこんなことみんなが言えるようになればと思っている。