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政策最新キーワード

女性自衛官の活躍推進とワーク・ライフ・バランス

藤本 哲史 投稿者 藤本 哲史 : 2017年5月1日

 2015年11月、防衛省は戦闘機および偵察機への女性の配置制限を解除した。これにより航空自衛隊では女性自衛官は全ての職種に就くことが可能になった。航空自衛隊は1993年に女性航空学生の採用を開始し、20年以上にわたって女性パイロットを養成してきたが、母性の保護や男女間のプライバシー確保などを理由にその任務を輸送や救難に限定していた。しかし配置制限が解除されたことにより、能力、適性および意欲のある隊員については女性であっても戦闘機パイロットへの登用が可能になった。現在のところ、2018年頃には日本初の女性戦闘機パイロットが部隊配置されるといわれている。防衛省は、2016年3月に陸上自衛隊の対戦車ヘリコプター隊飛行班、および海上自衛隊のミサイル艇、掃海艦等への女性の配置制限を撤廃し、さらに2017年4月18日に陸上自衛隊の普通科中隊、戦車中隊等においても配置制限を解除することを発表した。これらの女性の職域拡大は、女性自衛官の活躍を推し進めるうえでの重要なステップになったといえる。(ただし、防衛省は現在も陸上自衛隊においては特殊武器防護隊および坑道中隊を、また海上自衛隊においては潜水艦を女性の配置制限の対象としている。)

 現状、航空、海上、陸上自衛隊の全自衛官に占める女性の割合は低い。近年、女性自衛官は増加傾向にあるものの、2016年末時点で13,989人、女性比率は6.1%である。上述のような職域拡大は女性を活用するうえでの必要条件ではあるが、十分条件とはいえない。女性の活躍を推進するためには、職域における男女の均等に加えて、仕事と生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)のための支援が欠かせない。航空自衛隊では、全ての隊員が仕事と私的生活を両立して活躍できるようにいくつかの支援策を展開している。例えば、2016年4月に、航空自衛隊初の庁内託児施設「キッズスカイ入間」を入間基地(埼玉県狭山市)に開設し、災害派遣などの緊急時における子どもの一時預かりなど、自衛隊の勤務の特殊性に対応した託児支援を行っている。(陸上自衛隊では朝霞駐屯地など全国4か所に、海上自衛隊では横須賀第2術科学校に庁内託児施設を開設している。)また、「配偶者同行休業制度」(公務での活躍が期待される隊員が、外国で勤務等をする配偶者に同行するために、自衛官としての身分を保有しつつ、休業取得できる制度)を導入し、自衛官・職員のワーク・ライフ・バランスを支援している。

 今後、女性自衛官の活躍を推進し、自衛隊にワーク・ライフ・バランスを浸透させるためには、制度的な整備にとどまらず、以下のような点についても検討が必要になると考えられる。

(1)ワーク・ライフ・バランスと能力育成の相乗効果
 仕事と生活の両立支援を行うことは重要だが、それだけでは十分とはいえない。働く人々の長期的なキャリア形成を視野に入れて支援を行うことが大切である。最近のワーク・ライフ・バランス研究では、両立支援と人材育成を組み合わせて行うときに相乗効果が生まれ、働く人々のパフォーマンスが向上することが指摘されている。具体的には、長期的なキャリア形成を視野に入れてワーク・ライフ・バランス支援を展開する組織において、支援施策が組織のパフォーマンスに対してプラスの効果をおよぼしている。ワーク・ライフ・バランス施策は働き手の確保、定着に効果があるため、職場のメンバーを長期的に育成する人材戦略とは整合的な施策ということだ。
 これは女性自衛官のキャリアを考えるうえで重要な点である。働き続けることで、「自分の能力が高まっている」「個人的に成長している」と実感できるとき、それは自衛官としての仕事に対するモチベーション促進の要因になると考えられる。

(2)自律的な行動とセルフマネジメントの促進
 ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、働く本人にも自律的な行動と意識が求められる。仕事と生活を両立させるためには、まず「自分にとって何が大切か」を判断し自発的に行動する必要がある。そして自ら望ましいバランスを実現するために、時間管理のスキルと意思が必要になる。自律性を高めるためには個人の意識は重要だが、同時にセルフマネジメントの能力を身につけるためのトレーニングも必要だ。さらに、互いの多様な生活ニーズを認め合うコミュニケーション力を高め、職場における信頼関係を強化することも重要である。


女性自衛官の在職者推移

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(出所) 平成28年版防衛白書