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政策に対する意識を高める~最低賃金改定を例に挙げて

平野 大昌 投稿者 平野 大昌 : 2016年10月1日

 最低賃金が改定され、今月から全国平均で25円上がることになりました。この平均25円の引き上げは、平成2002年度以降、最も高い引き上げ額です。たとえば、京都では10月2日から去年と比べて24円高くなり、最低賃金は1時間当たり831円になります。
 学生の皆さんはこの24円の引き上げをどのように感じるでしょうか。たとえば、もしあなたが京都でアルバイトをしており、時給がこれまでの最低賃金である807円だったなら、最低賃金の引き上げは時給が上がることを意味するので、うれしいと感じるかもしれません。他方、現在のアルバイトで時給を831円以上もらっている方は、今回の最低賃金の引き上げは、あなたの時給に影響を与えないので特に関心がないかもしれません。

 しかし、最低賃金の引き上げは、単純に賃金が上昇するという話だけにはとどまりません。では、最低賃金の引き上げは賃金の変化以外にどのような影響があると考えられるでしょうか。話を単純化するために、ここではあるお店のアルバイトの時給が最低賃金と同じである状況を考えましょう。(お店は飲食店でも、洋服店でも好きなお店をご自由に想像してください。)最低賃金が引き上げられると、アルバイトで働いている人は時給が上がるので、これまで通り働くとすると給料が増えることになります。給料が増えれば、これまでよりも多くの消費を行うことができます。このような場合は、アルバイトで働いている人にとっては望ましいことでしょう。さらに、消費を増やす人が多ければ、その消費の対象になるお店は売上が高くなるかもしれません。このように、最低賃金の引き上げは、働く人だけでなく、消費を通して、企業にも恩恵をもたらす可能性があります。
 一方、最低賃金でアルバイトを雇っていたお店は最低賃金の上昇分だけ1時間当たりの人件費が高くなります。もし、そのお店の売上が同じなら、人件費が高くなった分だけ利益が下がってしまいます。このとき、利益を十分に確保できないお店は人件費を抑えるために、これまで雇っていたアルバイトの人数を減らすかもしれません。このような場合、不幸にもアルバイトを辞めざるを得なくなった人は給料が増えるどころか、新たなアルバイトを探さなければなりません。また、辞めることなく継続して働く人たちにも影響が生じる可能性があります。たとえば、お店では10の仕事があり、その10の仕事がなされることによってこれまでの売上が維持されていたとしましょう。さらに、アルバイトの2人でその仕事を半分ずつこなしていたとしましょう。アルバイトの数を1人減らしたとすると、これまで同様の売上を維持するには、継続して働く人が1人でこれまでの2倍にあたる10の仕事をしなければなりません。このような状況では、最低賃金の引き上げで給料が高くなったとしても、より多くの仕事をすることになり、継続して働く人にとっては望ましくないかもしれません。また、その人が1人で10の仕事ができず、7ぐらいまでしかできない場合は売上が減り、結局利益が減少する可能性もあります。
 以上のように、ごく簡単に考えてみただけでも、最低賃金の引き上げは多様な影響を及ぼす可能性があり、良いと思われる影響もあれば、好ましくないであろう影響もあります。また、上述のようにアルバイトの人員が減り、残された人の仕事量が増えるなど、自分には影響がないと思われたことでも間接的に影響が及ぶということもあります。そのため、最低賃金が引き上げられても時給に影響がないからといって、無関心ではいられなくなるかもしれません。(たとえば、10月以降にアルバイトで割り当てられる仕事の量が増えたなら、もしかすると最低賃金が引き上げられたことが影響しているかもしれません。)
 もちろん、ここでは頭の中で考えただけなので、厳密でもなければ、実際にそのようなことが起こるかどうかはわかりません。しかし、最低賃金改定に限らず、一見自分とは関係がないように思われる政策でも、結果的に自分に影響を及ぼす可能性を意識することは大切です。なぜなら、政策実施は政策対象者だけではなく、非対象者にも影響を及ぼす可能性があるため、政策効果を正しく考えるためには、そのような意識をもつことが必要になるからです。政策学部に在籍している皆さんは様々な政策に触れ、それらの政策について考える機会が多いと思いますが、そのような意識をもっていると政策効果についてより深い洞察ができるようになるのではないでしょうか。そのような意識を高めるためにも、秋学期の講義での勉強に励んでください。