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経済のグローバル化に立ち向かうミャンマー社会の底力

岡本 由美子 投稿者 岡本 由美子 : 2015年4月1日

 2011年3月に民政移管を達成して以降、ミャンマーの快進撃はとまらない。アジア開発銀行の予測によれば、2014年度のミャンマーの国内総生産の年成長率は7.7パーセントであり、2015年、2016年度はさらに高い8パーセント以上の成長率が見込まれている1。果たして、この経済成長は持続可能なものであろうか。

 確かに、政府主導のハード・インフラに対する投資、ヤンゴンやマンダレーといった大都市を中心とした不動産開発、外資企業による製造業への投資、観光業を代表とするサービス産業の興隆がけん引役となり、ミャンマー経済も着実に成長を遂げているといえる。また、ミャンマー国内事業登録件数が2011年を境に劇的に増えており2、ミャンマー民間企業の着実な成長も見てとれる。さらに、2015年3月に日本貿易振興機構ヤンゴン事務所で入手した資料3によると、日本企業のミャンマーへの進出はまだ本格化してはいないものの、ヤンゴン日本人商工会議所会員数は2011年度の50前後から2014年度終わりまでにすでに221まで伸びている。日本のミャンマーに対する期待が相当に大きいことが見てとれる。

 ただし、経済の量的拡大はいいことばかりではない。1つ目の懸念は環境破壊である。2015年3月、現地調査で訪れたミャンマー第2の都市マンダレーはモーターバイクの急速な増加によって大気汚染が進み、空がいつも霞んでしまっていた。また、都市、農村にかかわらずゴミの問題が深刻化し、廃棄物処理の改善が絶対不可欠となってきている。さらに、風光明媚な観光地として知られるインレー湖の環境汚染も深刻化している。

 2つ目は、経済格差の拡大である。統計データが公表されていないので正確にはもちろん把握できないが、都市内、農村内、そして、都市と農村の間の格差は広がりつつあるように見受けられる。残念ながら、先進国のように所得の再分配機能が経済政策に備わっていない。経済成長の成果が全国民にあまねく行き渡っている状態とは言い難いであろう。

 しかし、ミャンマー社会のすごいところは、行政による'政策'を待つのではなく、住民が自発的にその解決に動き出していることである。例えば、ゴミ問題が深刻化するミャンマー一大観光都市バガン近郊で、1週間に一度、散らばっているゴミを皆で拾い、そのゴミを一カ所に集約するようになった村が出現し始めた。観光客が増え、観光客の目が気になりだし、住民自ら自発的にその解決に乗り出したのである4

 また、マンダレーから車で1時間少々行ったところに、Pyin Oo Lwinという町がある。日本でいうと、さしずめ、軽井沢といったところであろうか。その近郊はミャンマーでは一大コーヒー生産地として知られる。ただし、かつての社会主義の不完全性からであろうか、大土地所者である農民とそうでない農民とでは格差がかなりある。世界的にあまり知られていなかったミャンマーのコーヒーの存在が近年国際的に知られるようになったのはいいが、小規模農民だけでは力が強い国際的なバイヤーとは対等に交渉がとてもできない。そこで、マンダレー地区では生産者が集まって組合を結成し、①地区全体のコーヒーの質を上げ、②国際的にマーケティングを行い、かつ、③値段の交渉を行うようになった、ようである5。自ら組織化を図り、格差問題を乗り越えて、グローバル化に立ち向かう姿は極めて興味深い。

 いましばらく、ミャンマーから目が離せなくなった。

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1 以下の資料を参照。Asian Development Bank (2015), Asian Development Outlook
2015: Financing Asia's Future Growth. Manila: Asian Development Bank.

2 脚注1を参照。

3 高原正樹(2015)「ミャンマーの投資環境と日系企業進出動向」日本貿易振興機構ヤンゴン事務所(平成27年度3月現在)。

4 2015年3月、バガンにおける現地調査に基づく。

5 2015年3月、マンダレーにおける現地調査に基づく。