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上勝町からの挑戦

岡本 由美子 投稿者 岡本 由美子 : 2014年4月22日

 今年でこのコラムで徳島県上勝町を取り上げるのは3回目である。私のゼミでは毎年春に、ここで研修合宿を行っている。私を含め、ゼミ生の満足度は極めて高い。毎年、ここに戻りたくなるのである。この町の何が人を惹きつけるのであろうか。
 人口2000人弱ほどの規模で、しかも高齢化率が50パーセントを超える町だと聞くと、大抵の人は悲惨に思うであろう。しかし、現地を訪れてみると、全くその予想は裏切られる。高齢者の方々、それも70歳、80歳代の女性の方々が非常に元気で、生き甲斐をもって働いている。タブレットを片手に市況をチェックし、葉っぱを出荷する姿は恐れ入るとしかいいようがない。また、FACEBOOKといったSNSを活用して外部の人とのつながりを拡大していく様子は全く年齢を感じさせないものである。高齢者に対する既成概念への'挑戦'である。
 葉っぱビジネスで有名な上勝町であるが、それだけではない。上勝町は平地が少ないため、同じ商品をつくるのでも、通常の17倍もコストがかかると言われている 。それをはねのけるためには、徹底的に他と差別化を図った、高付加価値商品の開発しかない。それをすだち・ゆず・ゆこう・阿波番茶の有機栽培で行い始めた農家がある。また、その製品の加工品も開発して市場で販売されるようになった。その上、果汁の皮や搾りかすを堆肥化して畑に戻すという、完全循環型農業にも従事されている。さらに、その堆肥工場の屋根には太陽光パネルが設置され、発電も行なわれている。どれもこれも全く簡単ではないが、環境保全型農業の実現化に向けた新しい'挑戦'である。ゼロ・ウエスト宣言を発した町ならではの取り組みである。
 上勝町は農業が主体の町であるが、サービス部門でも新たな'挑戦'が生まれている。1つは、地域の農産物をふんだんに使い、かつ、地域に密着しながら、都会的センスを醸し出すカフェの誕生である。これも、あの山奥に?と最初は驚嘆した人もいるが、町内外に限らず、利用客で賑わっているようである。さらに、上勝の自然と既存の施設を存分に活かしながら、上勝らしい新たなエコツーリズムの開発に取り組んでいる法人も誕生してきている。
 上勝町は一見すると'非常識'的とも思えることが多々あるのだが、よくよく考えてみると、しっかりとした理念とビジネスモデルに裏打ちされた新しい展開が毎年内側から見られるのである。ここが、海外を含めて多くの人を惹きつけてやまない魅力なのではないであろうか。
 上勝町の隣町、神山町はここ数年、IT企業のサテライトオフィスの集積で注目を集めているようである。産業集積の分類でいくと、神山町は典型的なサテライト産業集積である。神山町のような外部のIT企業が牽引する外発的な産業発展モデルとは異なり、上勝町モデルはマーシャル的、かつ、内発的な産業発展モデルといえよう。上勝町からの挑戦、来年も楽しみである。
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1 株式会社いろどりの谷健太氏からの情報に基づく。