こちらに共通ヘッダが追加されます。

TOP > 政策最新キーワード

政策最新キーワード

中国からの資本参加 -レナウンの事例より-

足立 光生 投稿者 足立 光生 : 2010年5月27日

昨年(2009年)の初夏、今は卒業してしまったゼミ生のなかで希望学生10人程と映画『ハゲタカ』を見に行った。さらに今春、原作者(法学部出身)にご講演いただくということで学内上演していたので、3回生のゼミ生諸君ともう一度見た。しつこくなく、淡々と進むストーリーは、2度見ても飽きない。特に、日本を代表する若手俳優陣の演技が巧みで、異彩を放つ。登場人物はスーツにメガネという固い格好なのに野性的であり、狩りをしているような鋭い目力が印象的だった。

この映画では「誰かになる」ことが繰り返して主張される。人間は成長する過程で、自分のなりたい姿を追い求める。ただし、自分自身のなかにはじめからそうした姿を見つけることは難しく、憧れの「誰か」になることで理想に近づこうとする。中国側のファンド・マネージャー(玉山鉄二)は、若い頃に同僚であり、当時憧れの存在であったファンド・マネージャーの鷲津(大森南朋)にM&Aの舞台で挑む。鷲津を睨みつけながら「オレは、アンタだ」と吐き捨てる場面が、良い。

さて、本論に入ろう。当映画の大筋は、中国系投資ファンドが日本の自動車メーカーの買収を発表、それを阻止しようとする日系投資ファンドとの攻防、・・・、といった展開である。映画では買収を企てる中国系ファンドの冷静さと強かさが強調される。
あくまでもこれは映画のなかでのお話である。ただし、中国からの資本が日本企業へ向かうことは遠い未来のことでなく、現実の世界でも起きている。むしろ、避けられない潮流ではないだろうか。

その一例が有名アパレルメーカーのレナウンだ。
2010年5月24日に、中国のアパレルメーカー山東如意集団がレナウンと資本業務提携することが発表された。当集団は第三者割当増資によって持ち株比率40%以上の筆頭株主となる予定だ。それに伴い、レナウンは山東如意集団から3人の取締役を受け入れることになる。
そもそもレナウンに関しては業績不振により、株主より抜本的な経営改革が求められてきた。最近では日系の投資ファンドも資本参加し、経営改善が要求された。そのようななか今回の動きがあった。

このニュースを受けて、株式市場はレナウン株をどのように評価したか。
2010年5月現在、欧州の一連の財務危機(それに伴う円高)を受けて日経平均は急降下している。それにも関わらずレナウンの株価は逆行した。
発表が行われる前の5月21日(金)のレナウンの終値は141円。ただし、
5月24日(月)はストップ高で値幅制限50円いっぱいの191円。
5月25日(火)は同じくストップ高で241円。
5月26日(水)は264円の高値まで高騰する。
この原稿を書いている5月27日(木)も堅調に推移した。
株式市場は山東如意集団のレナウンに対する資本参加を評価していることは間違いない。

なぜ山東如意集団はレナウンに資本参加するのか?
現在、中国国内における購買意欲は、外貨の蓄積とともに最高レベルに引き上げられているといえよう。中国にとって日本の老舗ブランドに対する憧れは(衣料だけにとどまらず)強く、信頼は厚い。(冒頭の『ハゲタカ』の話をもちだすならば)山東如意集団にとってレナウンは憧れの「誰か」であったのではないか。そして、自らがそれになるチャンスを今回手にいれた。レナウンの持つブランドをそのまま手に入れることは、山東如意集団にとって大きなビジネス・チャンスとなるであろう。

一方、レナウンは中国資本の下で従来型ビジネス・モデルを大きく転換させることになる。「中国の購買力」を外に抱えるのではなく、内に抱えるというビジネス・モデルは老舗企業にとって極めて大きな変化を要する。これを投稿した5月27日現在では(今週ニュースが出たばかりなので)まだまだ不確定な部分が多い。ただし他の日本企業にとっても他人事ではないはずだ。これから起きる現実を知るために、レナウンには要注目であろう。