こちらに共通ヘッダが追加されます。

TOP > 政策最新キーワード

政策最新キーワード

政府の資産と負債-サラ金への過払い請求から学ぶ?

野間 敏克 投稿者 野間 敏克 : 2010年3月1日

 最近電車内でよく目にするようになった広告に、「高利貸しへの過払い払戻請求を支援します」との弁護士事務所の広告があります。違法に高い利子を支払う必要はありませんし、ましてや、本人が知らぬ間に結ばれた理不尽な借入契約には、弁護士さんが断固返済を拒否してくれることでしょう。

 正常な金融の世界では、借りたお金で生み出した収益をもとに、適正な利子を元本に上乗せして債権者に返します。代表的な借り手である企業の場合、貸し借りの状態を示すバランスシート(貸借対照表)の右側には借入・社債・株式などの金額が記され、それらで調達した資金を使って手に入れた実物資産(土地建物など)や金融資産がバランスシートの左側に記されます。左側の資産を活用して得られる収益で、右側の負債への利子・配当を払い返済することが、正常な姿として求められます。
 もし将来、社員の退職金支払や設備更新などのために支出が予想されるなら、企業は、それもバランスシートの右側に記しておいて、左側の資産から得られる収益をあてる用意をしておかねばなりません。負債と資産を結びつけておくことが必要なのです。

 さて、国や県・市が巨額の借金を抱えていることは皆さんご存じでしょう。政府のバランスシートには、右側の負債として国債や地方債が記入され、左側に政府保有の土地建物や金融資産などが記されます。政府が巨額の(売却可能な)資産を保有していれば、たとえGDPの2倍の負債でも返済できるかもしれません。実際、少し前までは、資産の方がまだ多いと見られてました。が、ついに負債の方が大きくなったようです。民間企業ならとっくに倒産する「債務超過」の状態です(『日本経済新聞』2010年2月22日朝刊)。
 ただし、実は、バランスシートの左側にとても大きな資産が隠されてますから、大丈夫!今後いくらでも国民からおカネを取りあげることができる「徴税権」という特別な資産です。大幅な増税をすればいつでも借金は返せるというわけで、それを考えれば、債務超過だとあわてる必要はありません。
 ところが、少しの徴税権では足りないような巨額の負債が、バランスシートの右側にも隠されていました。

 バランスシートの右側に記されるのは、国債や地方債など、誰もが聞いたことのある負債ばかりではありません。社会保障基金のような「将来にわたってあなたに支出します」という約束の代償として預かったおカネも含まれます。預かった代わりに、将来にわたって支出することが決まっているという意味で、あたかも借金の元利返済のような負債とみなすことができます。
 そしてその「将来支出の約束」の中には、バランスシートに現れている数値をはるかに超えた、言い換えると負債と資産が全く結びついてないものが、かなりあります。財源のあてもないのに支払約束をする、自民党政権が増やし、民主党政権がさらに輪をかけて上乗せしようとしている、そのようなカラ約束が「隠された負債」を膨張させてしまいました。

 政府の隠された負債は、企業が銀行から借りた時のような、先に必要資金を全額受け取ったから、あとで利子と元本を返してゆく、というものではありません。代金を一部しかあるいは全く受け取ってもないのに、将来どこかから入ってくるだろうという安易な予想のもとに結ばれた、無責任な約束です。
 代金を十分には受け取ってないので、バランスシート左側の資産は増えていません。一部受け取ったけど無駄使いされたものもあります。社会保障のために支出しますという約束(負債)は結んだものの、その裏付けとなる資産が全く足りないのが現状なのです。

 一旦社会保障の権利を得た国民は、それに見合う代金は一部しか払ってないにも関わらず、約束を守れと受け取る権利ばかりを主張する債権者となります。貸してもないのに取り立てに来る高利貸しのよう、というのは言い過ぎでしょうか。
 政府は、目に見える国債・地方債以上に膨大な負債を抱えています。その負債を返済しろと、自分は借りた覚えもないのに、上の世代から取り立てにさらされようとしているのが、現役世代と将来世代です。

 サラ金救済の広告を出している弁護士さんには、ぜひ、このような理不尽な返済を拒否し払い戻しを請求する運動に、支援をお願いしたいと思います。