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政策最新キーワード

Flexicurity

岡本 由美子 投稿者 岡本 由美子 : 2009年9月16日

皆さんは、flexicurityという言葉をご存じでしょうか。英語のflexible(柔軟性)とsecurity(保障)を合わせた造語です。デンマークの労働市場と雇用政策の特徴を表した言葉で、今、欧州のみならず、日本でも注目されつつあります。

 20世紀から21世紀初頭にかけ、世界にグローバリゼーションの波が押し寄せました。もの、かね、ひと、技術、情報が国境を越えて動くのみならず、それぞれの国独自に存在してきた様々なきまりや諸制度も画一化の方向に動き出したことは言うまでもありません。そのようなグローバル化が進む中で、ヨーロッパにおいて高福祉制度が維持できるのだろうかという疑問が世界の注目の的となっていました。高い税金は企業や人の空洞化を招きかねませんし、高福祉制度は人々の勤労・起業への意欲を喪失しかねません。
しかし、北欧諸国、特にデンマークの事例はその両立が可能であることを示しています。その鍵の1つが上でも述べたflexicurityにあるのではないでしょうか。グローバル化が進めば進むほど、企業も柔軟に生産・雇用調整を迫られることになります。デンマークは企業による雇用・解雇が容易で労働市場の柔軟性が非常に高いとされています。アメリカやイギリスよりもその柔軟性が高いと指摘する報告書もあるほどです。
 また、労働者側も転職を積極的にとらえていますし、失職することを恐れてもいません。それもそのはず。手厚い失業保険が支給されるからです。しかし、高手当が長く続けば、労働者側の勤労意欲は薄れ、財政負担も大きくなってしまいます。それを防ぐため、政府は積極的な労働政策を合わせて採り、技術や知識の向上を通して労働者の社会への復帰と財政負担の軽減化を図っています。
 さらに、デンマークはOECD諸国の中では、起業の容易さではナンバーワンにランクされています。ある企業の職を失った人が起業し、10年後にその分野を代表するベンチャー企業に育った例もあります。また、この起業のしやすさが一因となり、デンマークのバイオ産業は欧州を代表するハイテククラスターの1つにこの10年間で急成長しました。
 ある著名なハーバード大学教授の予想とは反対に、デンマークはその独自の高福祉制度を維持しつつ、産業の高度化と雇用の創出に成功をしてきました。欧州ではデンマークのこのFlexicurityが議論の際の1つの基準になりつつあります。もちろん、デンマークにおいてすべてが天国というわけではありませんし、歴史、文化、産業構造が全く異なる日本に即、導入可能な制度というわけではありません。しかし、デンマークの事例は、グローバル社会の中で如何にその国の独自性をいかしかつ維持しながら、ある一定の経済パーフォーマンスを創出できるかを端的に示していると思います。皆さん、グローバル社会の問題とその政策の在り方について、一緒に勉強してみませんか。