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政策最新キーワード

リーマン・ショックと株価の変動性

足立 光生 投稿者 足立 光生 : 2008年12月10日

今年9月15日にリーマン・ブラザーズ証券会社が破綻し、世界的な金融危機(リーマン・ショック)が生じました。主要企業の大幅減益が次々と報じられるなか、わが国の株価指標として代表的な日経平均株価にも動揺が続いています。日経平均株価は、リーマンが破綻する直前の2008年9月12日には終値で12,214円76銭でしたが、その後急速に株安が進展し、10月27日にはバブル後最安値を更新して終値は7,162円90銭、その翌28日には7000円を一時的に割り込みました。さらに、着目すべきは、日経平均株価がその後も急上昇、また急下降するという乱高下を何度も繰り返した点です。

そこで注目したいのは、インプライド・ボラティリティ(Implied Volatility、以下IV)とよばれる変動性を表す指標です。時系列のぶれ(標準偏差)を加工して得られるボラティリティとしてヒストリカル・ボラティリティ(Historical Volatility、HV)が挙げられますが、IVはそれとは異なります。IVを計算するためには様々な方法が考えられていますが、旧来から、「オプション市場で実際に取引されたオプション価格には、どのくらいのボラティリティが潜在的に想定されているか」という視点から、オプション価格計算式を逆算して求める方法が一般的に用いられています。その場合、IVをオプション市場関係者が暗黙に想定した原資産の変動性と考えることができるため、しばしば市場で注目を集めます。

これまでの日経平均株価のIV(以下、日経平均IV)の水準はどのくらいだったのでしょうか。日本経済新聞社が日経マーケット総合面で公表している日経平均IVを例にとって考えてみましょう。たとえば、2006年の日経平均IVは、全営業日の平均値(終値ベース)で約21.75%、サブプライムによる損失が問題になった2007年の平均値で約21.98%でした。ところが、リーマン・ショック以降、急速にIVが高まっていく異例の状況がみられました。リーマン・ショック直前の今年9月12日に日経平均IVは28.1%であったものの、それ以降急上昇し、10月8日には104.8%、それ以降も何度か終値ベースで100%を超えるという展開を見せています(下の図1が、そのことを示しています)。

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これまで終値ベースで日経平均IVが最も高かった日は、米国でテロが起きた直後の2001年9月12日でした(136.8%)。ただし、終値ベースで高IVのランキングを作成してみると、たしかに2001年9月12日の1位は揺るぎないものの、第2位から第5位に今年の営業日が並びます(下の図2がそのことを示しています)。

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この文章を書いている2008年12月5日現在、日経平均IVは71.8%と一応落ち着きをみせていますが、それでも近年の水準に比べてきわめて高い水準にあることは間違いありません。かりに変動性の指標として日経平均IVが適切であると考えた場合、日経平均IVの動向はリーマン・ショック以降に市場関係者が株式市場に対して高いリスクを感じている事を示唆しています。市場を安定化させるための更なる政策が望まれているのかもしれません。
(データ提供:株式会社QUICK)

世界の金融危機とアジア経済

岡本 由美子 投稿者 岡本 由美子 : 2008年12月10日

100年に一度と言われる金融危機が世界経済に大打撃を与えている。1997年にアジア通貨・金融危機で大きな経済的危機に陥ったアジア経済はどうであろうか。

以下の表は、1998年と2009年の東アジア諸国のGDP成長率を比較したものである(なお、2009年に関しては経済予測値である)。前回の通貨・金融危機直後は、中国、インド、台湾を除いて東アジア諸国はすべてマイナス成長率を記録している。さらに、フィリピンとシンガポールを除いてその下げ幅は極めて大きかったことがわかる。一方、アジア開発銀行によれば、これら諸国の2009年の経済状況は10年前の金融危機と比べるとその影響は比較的軽微であると予測されている。

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ただし、東アジア諸国も喜んでばかりはいられない。米国のサブプライムローン問題に端を発する金融危機の直接的被害は比較的少ないとされるが、商品やサービスの貿易取引を通じたマイナス効果は無視できないからである(貿易リンケージ効果)。東アジア諸国は1990年代以降、域内での生産ネットワークが拡大し、域内貿易比率が急速に増加した。しかしながら、これは東アジア諸国の米国や欧州の市場への依存度が低下したことを意味しない。

確かに、中国を除いた東アジア諸国の輸出における対米依存度はここ10年間で急速に低下した。しかしこれは、中国に部材や資本財を輸出し、中国で製品を組み立て、それを中国から米国やヨーロッパに輸出するという、迂回生産に一部とって代わったにすぎない。事実、中国の対米依存度は低下傾向にない。欧州についても同様なことがいえる。したがって、金融危機による米国及び欧州の景気減速・後退はじわじわと東アジア諸国の実物経済に影響を及ぼしてくると考えられる。

昨年まで、盛んに「デカップリング」論が流行した。米国経済が減速をしても中国等の新興国や欧州の成長に支えられ、世界経済の拡大が継続するであろうと期待された。しかし、もはや、「デカップリング」は成立しなかったと見るべきではなかろうか。グローバル化された世界経済の相互依存性は予想以上に高まっていると考えられるからである。必要以上に悲観するべきではないが、グローバル経済下における負の連鎖の影響を軽く見るべきではないであろう。