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政策最新キーワード

税収だけじゃない、ガソリン税のもう一つの役割

秋吉 史夫 投稿者 秋吉 史夫 : 2008年5月19日

4月はガソリン税が話題を集めました。日本では、ガソリン1リットルに対して約25円の暫定税率が本来の税額に上乗せされて課税されています。しかし暫定税率の延長を巡って与野党が激しく対立した結果、ガソリンにかかる暫定税率は4月から1ヶ月の間失効することになったのです。暫定税率の一時的な廃止によって生じたガソリンの値下げと再値上げは、人々の生活に影響を与えました。ガソリンスタンドで給油待ちの車が行列をつくっている光景を皆さんも目にしたと思います。

 ガソリンの暫定税率を巡る議論は税の使い道に関するものが大半です。野党は、暫定税率からの税収が無駄な道路建設に使われているとして暫定税率の廃止を主張しています。しかしガソリンへの課税は、実は環境保護という重要な役割を果たしているのです。

経済学では、外部不経済という問題が知られています。外部不経済とは、ある人の行動が第三者に悪影響を与えているにもかかわらず、その悪影響から生じる費用を金銭の形で支払っていない状況のことをいいます。自動車はガソリンを消費して排気ガスを発生させます。自動車の排気ガスは地球環境を悪化させ、多くの人々に悪影響を与えます。しかし自動車の利用者は環境悪化の費用を支払っていないために、環境保護の観点から見て最適な消費量以上にガソリンを消費することになります。このように自動車によるガソリン消費は、無視できない外部不経済の問題を発生させるのです。

ガソリン消費による外部不経済の問題を解決する一つの方法が、ガソリンに税金をかけることです。ガソリン価格に環境悪化の費用に相当する金額を税金として上乗せすることでガソリンの過剰な消費を抑え、地球環境の悪化に歯止めをかける効果が期待できます。

下の図は、先進諸国のガソリン価格と税額を比較したものです。暫定税率分を含めても日本のガソリン税は、他の先進諸国と比べて決して高くないことが分かります。環境保護を重視するEU諸国で高いガソリン税が課されているという事実は、ガソリン税が環境保護に重要な役割を果たしていることを示唆しています。

税収をもたらす財源という観点からガソリン税の意義を考えることは重要ですが、環境保護というガソリン税のもう一つの役割も評価する必要があるのではないでしょうか。

OECD諸国のガソリン1リットル当たりの価格と税(2007年第2四半期)

OECD諸国のガソリン1リットル当たりの価格と税(2007年第2四半期)</

(出所) 財務省HP「国際比較に関する資料」
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/133.htm

高齢者は何歳から?

白瀨 由美香 投稿者 白瀨 由美香 : 2008年5月8日

 4月1日の発足直後から「後期高齢者医療制度」が議論と混乱を巻き起こしていますが、大学生の皆さんの中には、この制度に関するニュースを聞いて、高齢者には「前期」と「後期」の区別があるのだと、初めて知った人もいたかもしれません。

 日本では現在、65歳以上を高齢者とするという定義付けが一般になされており、今回の医療制度改革でもあったように、65~74歳は「前期高齢者」、75歳以上は「後期高齢者」と呼ばれています。ただし、これは生物学的に高齢者となる年齢が決まっているというような絶対的なものではありません。誕生日が来て一つ歳をとったからといって、急に体が衰えたり、病気がちになったりする訳ではないことからも想像できるでしょう。つまり、何歳から高齢者と呼ぶのか、何歳で「前期」「後期」を分けるのかというのは、社会保障などの制度を設計したり、統計データを集めたりする上での便宜的な区分にすぎないのです。

 したがって、様々な政策分野を見渡してみると、高齢者として扱われる対象年齢が異なる場合も見受けられます。たとえば「高齢者雇用」に関する分野では、多くの企業で60歳が定年とされていることから、主に60歳以上を対象にして、雇用継続の支援をしていく施策が行われています。

 ちなみに、国際機関の間でも高齢者の定義は様々です。OECD(経済協力開発機構)では65歳以上が高齢者とされているのですが、WHO(世界保健機関)では、60歳以上を"older people"、そして80歳以上を"the very old"あるいは"the oldest old"と表現している報告書もあります。

 さて、日本人の生活実感としては、何歳以上が高齢者なのでしょうか?内閣府が20歳以上の男女を対象に行った「年齢・加齢に対する考え方に関する意識調査」(平成16年6月)によれば、48.7%が「およそ70歳以上」を高齢者だと思うと回答しています。回答者の年齢別にみると、年齢が低いほど高齢者をイメージする年齢は低い傾向があり、20代では「およそ60歳以上」を高齢者とする回答が15.2%もありました。また、「どのような時期からが「高齢者」「お年寄り」だと思うか」という質問には、「仕事を引退した時期」を挙げたのが約1割、「年金を受給するようになった時期」のは約2割なのに対して、「身体の自由がきかないと感じるようになった時期」が最も多く、4割程度を占めています。

 現在の日本の平均寿命は世界的にもトップ水準にあり、男性が79歳、女性が86歳です。これはすなわち、60歳で定年退職し、65歳で年金の受給を始めたとしても、その後に平均すると10年以上の「第二の人生」が待っているということを意味しています。そんな「老後」を、誰もが安心して過ごすことができるような長寿社会であってほしいものです。