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政策最新キーワード

偽装の顛末

柿本 昭人 投稿者 柿本 昭人 : 2007年11月29日

 このところ、報道で「偽装」の文字を目にしない日がないくらいである。賞味期限、産地偽装、強度偽装。

 21世紀に入ってからの、思い出せる「偽装」を並べてみよう。牛肉偽装、企業の粉飾決算による株価つり上げ、耐震強度偽装、偽装請負。

 福沢諭吉が『学問のすゝめ』のなかで、「見せかけ」について、こう書いている。

三井大丸の品は正札にて大丈夫なりとて品柄をも改めずしてこれを買い、馬琴の作なれば必ず面白しとて表題ばかりを聞きて注文する者多し。故に三井大丸の店は益々繁盛し、馬琴の著書は益々流行して、商売にも著述にも甚だ都合よきことあり。人望を得るの大切なることもって知るべし。

一方、「人望も栄名も無用に属し、ただ実物を当てにして事をなすべき」とすると、非常に面倒なことになる。

人を当てにせざるはその人を疑えばなり。人を疑えば際限もあらず。目付に目を付くるがために目付を置き、監察を監察するがために監察を命じ、結局何の取締にもならずして徒に人の気配を損じたるの奇談は、古今にその例甚だ多し。

 耐震偽装への対応策として国交省が今年の6月に行った法改正は、見事にこの実例となっている。いや、「羮に懲りて膾を吹く」に近いかもしれない。

 「住宅着工急減の深層(上)「建築確認いつ下りる」――まず法改正、見切り発車」『日本経済新聞』(2007/11/16)は、「耐震偽装事件で揺らいだ住まいの安心を取り戻すはずだった法改正が、なぜ大混乱に」陥ったかを伝えている。

今回の法改正では、大規模な建物の安全性を第三者が二重に点検する仕組みを導入した。慣例で認めてきた申請後の設計図の修正や差し替えも原則廃止。従来は二十一日間だった審査期間も最大七十日間に延長した。いずれも耐震偽装を見逃した反省が根底にある。

 だが、その結果は建築確認が下りず、工事も始められない。改正法では、担当する建築士も問題を見過ごした審査機関も処分対象となったために、確認申請はなかなか引き受け手が見つからず、審査機関も過剰なチェックを行うようになってしまった。事件発覚時には改竄可能だった構造計算プログラムの改竄防止プログラムの開発も終わっていない。

 今回の食品偽装事件を受けて、農水省はJAS法を改正し、表示などの基準を厳しくするのであろう。だが、この改正は偽装事件が起きるたびに繰り返されてきた。「なぜなくならないのか」の根本原因に立ち返って見るべきであろう。

 違反への厳罰化だけでは、耐震偽装への国交省の対応の二の舞になる。表示問題が解決できずに、食品まで店頭に並ばなくなる日が来ませんように。